KENWOOD TS-690

パワーが不安定とのことで、お預かりしました。

21Mhzのパワーが安定せず、メーカー修理に出したものの、修理不能で返品されたとのことです。

オーナー様によると、メーカーのサービスからは

・ドライブトランジスター不良
・オートチューナーがスプリアスに同調
・パワーユニット内のドライブ、セミドライブ不具合

の回答とのことです。

まずは、問題の症状を把握します。

 1.8~50Mhzまで順番に送信テストをしたところ、21MHz若干フラつき有り、7Mhzのパワーが10W 以下でおかしい。

 オートチューナーをスルーにすると正常になります。

 メーカーサービスのいうとおり、チューナーがスプリアスに同調しているのでしょうか。

 オーナー様が、温まってくると不調が顕著になると言っていたので、しばらく様子見です。
 
 なんと、ディスプレイが等間隔で点滅を始めました。

 オールリセットで復旧、しばらくするとディスプレイがまた点滅を始めます。

 チューナーをONにすると、点滅に合わせてどこかのリレーが動作している音がします。

  どこだ!どこのリレーだ? リレーは沢山使われているので探すのが大変です。

  耳をすますと、どうやらオートチューナーから音がしているのをつき止めました。

  ディスプレイの点滅と、リレーに何の関係があるのか?

  これは根が深いかも知れません。

ファイナルユニットの電源周りから部品交換です。

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ファイナルユニットの電解コンデンサーをオール交換しました。


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日本ケミコンの105℃品です。


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電源関係の部品はファイナルユニットに集中しています。

5Vや9Vを供給する部品が見えます。

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ファイナルユニットの、50Mhz切替えリレーを交換しました。


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マルツパーツ館でリレーを調達。

互換品 G6A-274P

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交換した部品です。


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オートチューナー取り外し。


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ディスプレイの点滅と連動して、カチカチ音を立てていたリレーがある基板です。


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オートチューナーへの高周波信号ON・スルーの切替えリレーです。

リレーの接点が導通不良になれば、送信も不安定になります。

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リレーを交換しました。

互換品

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ディスプレイの点滅との因果関係を探ります。


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電解コンデンサーをオール交換しました。

画像の中心にある交換した電解コンデンサーの両側のICは、前の回路図からチューナーのモーター駆動用ICです。

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調子良くパワーが出るようになりました。

オートチューナーの動作も良いようです。

新品のコンデンサーはエージングが必要なので、しばらく様子見です。

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ディスプレイは点滅しなくなりましたが、しかし、今度は消える。。。。

エンコーダーを回すと点灯して周波数を表示しますが、すぐにまた消える。。。

周波数は変化しますが、ULの信号音がするのでPLLがアンロックです。

悪い部品が新しくなると、他の弱いところにシワ寄せがくるというのは常識です。

他の場所にも次々と不具合が発生します。

原因は、意外と根が深い気がいたします。 

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メーカーサービスが言っていた、

 パワーユニット内のドライブ、セミドライブ不具合

も無いのではないか?と思うのですが、原因はつかめていません。

このトラブルが今だ解決せず、これが終わらなきゃ次に行けません。

PLLがアンロック状態ならば、ユニットを取り外すしかありません。

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回路図とにらめっこが続きます。

電圧が記されているので、片っ端から測定しました。

その結果、分周器(カウンター)ICのPINに規定の電圧が出力されていないのがわかりました。

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禁断のPLLユニットです。

とても大事な場所ですが、ICを剥がして張り替えてみましょう。

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IC1、IC2 uPD74HC390G 

カウンターICです。

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uPD74HC390G  → 

互換品 TC74HC390AF 

マルツパーツ館で入手しました。

74HCシリーズというロジックICで、製造メーカーが違うだけで、互換使用が可能です。

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少しサイズが大きいですが、張り替えました。

分周されたデータが出力されれば、PLLがロックするはずです。

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結果は、アンロックのままで改善しませんでした。

回路図のとおり5V、8Vの電源ラインは掛かってるしOKなのですが、なぜでしょう? 

PLL基板には重要なICがいくつもあり、データシートを見ながらアンロックの状態を追いかけてゆくのは無理です。

ジャンクパーツのPLL基板と交換しました。

電解コンデンサーはALL新品に交換済みです。

PLLの20MHzのオシレーターが周波数カウンターにて検出できるようになり、発振しているようです。

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送信しながら周波数エンコーダーを回すと、PTTを離しても周波数はロックしたままになりますが、エンコーダーを回すと再びアンロックとなります。

かなり手強いですね。

これはもうPLLだけの問題ではないですね。

キャリアユニットのテストポイントに、規定の電圧が出ていないのを発見しました。

中央にある8.375Mhzのクリスタルが発振していません。

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キャリアユニットを取り外しました。


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問題のクリスタルです。


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クリスタルと、周辺のスルーホールを再ハンダし直しました。


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波形が出たー!!

サービスマニュアル通りに 1V p-p に調整しました。

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PLL電圧、規定の2.5V。

正常に出力するようになりました。

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Sメーター調整 

29Mhz FM

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受信感度。

29Mhz FMにて ー27.0dBu (12dB SINAD)

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送信出力

全BANDで80W以上出ていると思います。

JHGの口笛変調です、写真撮りは難しいですね。

SSBの場合、パワー計の指示値は1/3くらいなのですよね。

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メーカー修理に出して、修理不能で戻ってきたTS-690でした。

JHGまでが見捨てたら、この無線機はここで死んでしまいます。

今回、ちょっと必死でした。。。。

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