愛用の無線機というのは、今後も長く使いたいものです。

IC-275も長く使いたいとのことで、点検のためお預かりしました。

不調はないとのことですが、出荷時よりも、使い込んで無線機が安定した時期に再調整するのが理想ですね。

ムギ球は切れやすいので、LED化しておけば安心です。

LEDは発熱もほとんど無く、色もキレイな感じになると思いますが、ムギ球の暖かい色が好きという方は、電球色のLEDを使えば近い色になります。

LED化から始めます。

IC-275/375シリーズのLED化は、フロントパネルを取り外し、シールド板を外してから行いますが、ムギ球まで到達するのまでの分解は、かなり大変な部類です。

イメージ 1

液晶パネル付近に2個、Sメーター付近に2個、合計4個のムギ球をLEDと交換します。

電流制限抵抗は470Ω、LEDの定格電流0,02A(20mA)に対して、ほぼ定格に近い電流を流します。

参考計算式

・電源電圧12V、LEDの降下電圧3,2Vの場合、電流制限抵抗470Ωでは、LEDに何A流れるか。

(12ー3,2)÷470=0,018A(18mA)

・電源電圧12V、LEDの降下電圧3,2Vの場合、LEDに電流を0,02A(20mA)流すための電流制限
抵抗の値は。

(12ー3,2)÷0,02=440Ω

・470Ωの電流制限抵抗に、0,02A(20mA)の電流を流した場合の抵抗の電力容量(W)は。

470*0,02*0,02=0,188W

1/4 Wの抵抗でギリギリというところです。

1/4W=0,25W  0,25W>0,188W

2倍以上の電力容量の抵抗を使うのが望ましく、1/2Wなら安心です。 

並列にして使う方法もあります。

イメージ 2

LED交換後のパネル照明。

メロウイエロー色です、LED化するとキレイになりますね。

イメージ 3

ダイヤルエンコーダー。

周波数ダイヤルをどちらに回しても、周波数アップになります。

エンコーダー部を外してみると、ホコリで汚れていました。

イメージ 4

ホコリを掃除して、アルコール洗浄しました。

周波数ダイヤルの不具合は、これだけでは治りませんでした。

イメージ 5

分解して修理が必要です。

エンコーダーの構造が分かるでしょうか。

イメージ 8

赤外線LED、フォトダイオード、デジタルトランジスタなど。

DS1、DS2 赤外線LED
Q1、Q2 フォトダイオード

イメージ 7

光通過(スリット)装置。

赤外線LEDからの光を通過させる役を担います。

イメージ 6

スリット板のテンション調整、アルコール洗浄しました。

丸い円盤と、カモメのような形の板が組み合わさり、スリットとなります。

イメージ 9

赤外線LEDとフォトダイオードを交換します。

赤外線LEDからの光をスリットで通過と遮断をさせて、通過した光をフォトダイオードで受けて信号化します。

スリットには穴が2個あって、一方の穴が開いているとき片方は閉じています。

右回りと左回りで、どちらの穴が先に開くかでUP・DOWNが決まります。

先に開くほうの穴を■とすると、

右回り  →□ ■      左回り ■ □←

例えば右回りでは、右穴が連続して必ず先に開きます。

イメージ 10

赤外線LEDとフォトダイオードを交換しました。

貴重な部品です、JHGの手持ちも残り2セットとなりました。

イメージ 11

部品の検査ではフォトダイオードがNGでした。 

ダメージの判定。

光を受けられなかったのです。

イメージ 12

全て交換しました。


イメージ 13

赤外線LEDの光です。

赤外線は人間の目では見ることが出来ませんが、デジタルカメラを通せば見ることが出来ます。

撮影した画像がこれ。 

光っていますね、赤外線LEDは正常だということです。

イメージ 14

テレビのリモコンです。

テレビに向けてボタンを押します。

イメージ 15

先端には赤外線LEDがありますが、光は人間の目では見えません。

人間の可視光線は、380nm~780nmですが、赤外線LEDの光は850nmや940nmなので見えないのです。

紫外線 ←380nm---780nm→ 赤外線

ただし、光は強力に照射されていますので、連続で見るのは危険です。

テレビまで届くのですから、高輝度LEDライトで照らすのと同じです。

イメージ 16

人間の目より、カメラのCCDの方が可視範囲が少し広いので撮影出来るのです。

C-MOSタイプのものより、CCDタイプのほうが感度が高く、よく写ります。

イメージ 17

普通のデジタルカメラでも、CCDのものならよく見えるでしょう。


イメージ 18

スマホのカメラでも見えました。

リモコンが使えなくなったら、電池の消耗などLEDの状態を確認するのによいでしょう(笑)。

イメージ 19

エンコーダーのリペアが終わりました。


イメージ 20

周波数もなめらかに変化するようになりました。


イメージ 21

バックアップ電池の電圧、3,64VでまだOKです。


イメージ 22

周波数の調整。


イメージ 23

スプリアス良好です。


イメージ 24

FMデビエーション調整。

規定の4,8Khz

イメージ 25

出力 50W


イメージ 26

受信感度調整。


イメージ 27

調整後、受信感度。

ー139,6dBm (SINAD)

イメージ 28

FMセンターメーター調整。


イメージ 29

Sメーター調整。


イメージ 30

IC-275を愛用している方は多いです、傑作の名機に違いありません。

JHGも、これで何台目の点検修理になりますかねえ。

イメージ 31

電気髭そりのように精巧なスリットに反射する光。

このエンコーダーを搭載したIC-275は、価値があるというものです。

イメージ 32